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はじめに
Okeson(1995)1によれば,TMD管理における第一の医療専門家は、あくまでも歯科医師である。 すなわち、口腔顔面痛のもっとも一般的な原因は口腔内の疼痛(歯髄、歯周組織等)であり、他の関連組織(耳、眼、鼻等)に起因する痛みも含めて、これらの疼痛疾患は歯科医師によってTMDと鑑定される。 そのためには科学的根拠を持ち、しかも臨床に即した診断基準を含む治療ガイドラインをまとめる必要がある。
米国口腔顔面学会(American Academy of Orofacial Pain : AAOP)は、1993年にTMDに関する評価、診断、管理のガイドライン(指針)を発表した2。 さらに、1996年にはこれらを増補して、TMDにかかわる臨床家にとって重要な、他の頭蓋・口腔顔面領域の疼痛疾患も含めた口腔顔面痛の最新ガイドラインを発表した3。
しかし、このガイドラインは一般開業医のみならず、米国における頭蓋・口腔顔面領域の疼痛疾患の専門家をもその対象としており、TMD治療における歯科医師と他の医療専門家(例、理学療法士)との関係等、本邦の現状にそぐわない点もいくつかある。
本シリーズの目的は、最新のTMDに関する概念を基本とし、しかも一般開業医の現状に即したTMD治療について解説することである。
問診
TMDの管理においてまず第一に行うべきことは、患者の訴える症状を聞き出す問診であり、この点は他科とまったく同様である(図1)。 これまでの報告によれば、TMDにおいてもっとも頻繁に認められる自覚症状は痛みであり(表1)4、患者が受診する最大の理由と考えられる5。 通常の器質的疾患と違って、疼痛を主要症状とするTMDの診断において必要な情報の多くは問診から得られ、診査の貢献する割合は比較的小さくなる6。
また、TMDの原因に関しては、現時点ではしばしば他因子的であり、普遍的な因子は存在しないと考えられているが2、さまざまな発症に寄与する因子(寄与因子、表2)を確認することで長期にわたる満足のいく管理がはじめて可能となる。
通常、これらの因子については患者への質問からその多くを確認する7。 したがって、問診による、@主訴、A現病歴、B医科的病歴、C歯科的病歴、D個人歴、の採取はTMDの診査の中で最も重要な部分の1つであり、術者にとってもかなりの技術(臨床技能)を要する2。
本稿の目的は、TMDの診査における問診に関して日常臨床の限られた時間のなかでいかに行えるのかを、質問表も含めて具体的に解説することである。
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質問表
問診における病歴採取は患者自身が記入する質問表と、歯科医師による口述面接からなる2、7。 まず、第一に術者は口述面接をはじめる前に質問表に記入された事項をもとに再確認すべきである。
なぜならば、質問表は患者の訴えに関する情報源としてだけではなく、第一回目の面接時にもTMDにおいて重要とされる良好な患者-医師間の信頼関係を築くための基礎となるからである7。
図2はTMDのための質問表の参考例である。 特徴としては、一般的な質問以外にTMD発症の寄与因子(表2)を推察できるような質問事項がいくつか含まれているという点である(図2 「V.」の*印を参照)。
しかし、この質問表はあくまでも患者との面接時の参考となるもので、診断のための第一の情報源と考えるべきではない7。
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口述面接
[主訴]
TMDにおいては、主訴が複数存在することは決してめずらしくない(図2の問2)。 その場合、各々の症状は患者本人にとって重大な順に記録されるべきである2、7。 つまり、TMDにおける“治療の成功”とはそれらの症状の軽減あるいは除去を意味し2、患者の主訴が何であるかということは治療開始前の時点で再度確認しておく必要がある。
[現病歴]
現病歴とは、主訴に関連して派生してきた種々の症状の発生から現在までの経過を整理して記録したものである(図2の問4〜10)8。 頭蓋・口腔顔面領域にはTMDと類似した疼痛を生じる多くの障害が存在する3。
したがって、患者が複数の問題を有している場合、各々の痛みは区別して記録されるべきである。 なお、主訴に痛みが含まれる場合には、現病歴において少なくとも表3に示す点については明らかにする。 すなわち、@いつ、Aどこに、Bどんな痛みが発現したか、そしてその後、Cどうなったか、以上の4点である。
TMDは体性深部痛のうちの骨格筋痛に分類されるが(図3)1、患者の訴える疼痛症状がどのカテゴリーに分類されるかは、痛みのタイプからおよそ推測される7、9。 図2の問9は痛みのタイプに関する質問(*印を参照)である。 この問診段階での痛みに関する情報は,その後の鑑別診断において非常に重要となる。
以下に述べる医科的,歯科的病歴,個人歴に関しては,質問表(図2)を参考にし短時間で情報収集を行い記録する。
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[医科的病歴]
長時間の大開口を必要とすることもある歯科治療は,あくびや長時間の歌唱ともに,TMD発症の引き金となる可能性がある(図2の問11〜14)7
。 また,口腔顔面痛の最大の要因は歯痛であり1,3,患者が来院した時点で歯科治療を受けている場合はその内容と経過を明らかにする必要がある。
ブラキシズム(歯軋り,噛みしめ等)などの悪習癖もTMD発症の寄与因子(表2)となりえるので7、問診の段階でも確認する(図2の問13,14)。
[個人歴]
TMD患者には,しばしば発症に寄与する心理社会因子が認められる2。 一般的には職業的活動(失業,転職等)あるいは対人・家族関係における問題等である(図2の問1,12)。 これらにつても、明らかな問題があれば,基本的な情報は得ておくべきである。
図2の質問表は“クリッキングの既往をもつ30代のTMD患者”によって記入されたもので,表4は口述面接後の同患者の主訴,現病歴のまとめである。
この症例の場合は外傷が発症の引き金として考えられるが(図2の問6),その後に生じたTMD様の疼痛と機能障害は他科への受診にもかかわらず治癒せず,何らかの因子によって持続、悪化した。 現病歴(表4)から推察可能な寄与因子としては,家族の入院による生活パターンの変化および心理・感情的影響(不安,混乱)、睡眠障害、ブラキシズム等(図2の問12〜18)があげられる。 問診終了後,採取された様々な情報は整理,記録され,さらに現症の診査が行われる(図1)。
まとめ
Okeson(1995,1996)1.3によれば、口腔顔面痛において“治療の成功”が得られない最大の理由としては,誤診やあいまいな診断が最大の要因である。 TMDの管理においても適切な診断を下すということはまず第一に行われるべきであり,その際に重要な鍵となるのが問診である。
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参考文献
1. Okeson JP : Bell's
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1995.
2. American Academy of Orofacial Pain : Temporomandibular disorders;
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Quintessennce, 11-18, 61-79, 1993(杉崎正志, 藤井弘之監訳 : TMD治療の最新ガイドライン
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クインテッセンス出版, 1993).
3. American Academy of Orofacial Pain : Orofacial Pain; Guidelines for
assessment, diagnosis and management.. Chicago, Quintessennce,
45-52, 73-88, 1996(杉崎正志, 藤井弘之監訳 :
口腔顔面痛の最新ガイドライン ; 米国AAOP学会による評価,
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6. Okeson JP : Management of emporomandibular disorders and occlusion. St
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木野孔司, 小林馨監訳 : TMDと口腔顔面痛の臨床管理.東京,クインテッセンス出版,1997).
8. 篠原幸人 : 内科疾患における診断の意義と治療方針.
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9. Bell WE : Orofacial pains; Classification, diagnosis, management. ed 4,
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12. Travell JG, Simons DG : Myofascial Pain and dysfunction; The trigger
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