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一般開業医におけるTMD治療<診断> |
図は一部略 | |
| 1.はじめに | ||
| 2.歯痛 | ||
| 3.TMD痛 | ||
| 4.非TMD痛 | ||
| 5.TMDの診断学的分類 | ||
| 6.顎関節障害 | ||
| 7.咀嚼筋障害 | ||
| 8.治療計画(管理プログラム) | ||
| 9.まとめ | ||
| 10.参考文献 |
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はじめに OKeson(1995)によれば、TMDにおいて治療の“成功”が得られない理由としては、治療の質(クオリティー)ではなく誤診やあいまいな診断が最大の要因である1,2。 診断とは”他の疾患から1つの疾患を識別する技術”として定義されるが3、慢性のTMDおよび口腔顔面痛患者に正しい診断名を確定するのは容易ではない。 なぜならば、TMDはしばしば他の頭蓋顔面領域の疼痛疾患と共存し、顎関節・咀嚼筋以外の関連周囲組織を発生源とする、いわゆる非咀嚼系由来の口腔顔面痛との鑑別を要するからである2。 TMDにおける主訴の第一位は疼痛であるが4、日常臨床においてわれわれが遭遇する口腔顔領域の疼痛は次の3つに大別される2。 すなわち、 @歯痛(口腔由来の痛み) ATMD痛(咀嚼系由来の痛み) B非TMD痛(非咀嚼系由来の痛み) である。 日常臨床において効率良く鑑別診断を進めていくには、”類似の症状を起こしうるすべての疾患を含んだ診断分類のなかから、特定の疾患を除外していく”という消去法を用いるということである。 つまり、口腔顔面痛を主訴とする患者は、まず最初に歯原性の疼痛要因について診査されるべきであり、それが除外されたならば、非TMD痛について診査する5。 仮に、歯、歯周組織、あるいは咀嚼筋、顎関節が疼痛要因として除外されたならば、非TMD痛を疑う。 図1は日常臨床に即した口腔顔面痛の鑑別診断である。 なお、ここでは精神・神経科医による管理が必要となる心因性疼痛のカテゴリーに含まれるものは除外した。 口腔内の疼痛は口腔顔面痛のもっとも一般的な原因で、歯髄、歯周組織、歯肉、口腔粘膜領域、舌が含まれる。 口腔顔面領域の他の部位に診断を進める前に、ひとつの可能性として口腔内の疼痛は必ず除外しなければならない。 [臨床的な特徴] @歯や歯周組織に対する誘発試験(温度診、電気診、打診他)に反応する。 TMDの一般的な症状としては、頭痛および顎関節、顔面、耳、首、肩の痛み、下顎の運動制限、関節音、があげられる。 TMDは体性深部痛のうちの筋骨格痛に分類されるが(図2)1、体性痛とは局所に分布する正常な神経への侵害刺激によって生じる痛み(侵害受容性疼痛)である4。 したがって、診査における顎関節の触診あるいは機能時の痛みの有無の確認は、体性痛の特徴である“刺激−反応”という関係を臨床的に再現するのにもっとも推奨される方法である。 [臨床的な特徴] 頭蓋内の出血など緊急を要する問題や、目、耳、鼻などの頭蓋外の関連組織の疾患または一次性頭痛、神経痛によって生じる(図1)。 [臨床的な特徴] @下顎の機能と直接関連なしに、あるいは自発的に起こる。 TMDにおける一次(初期)診断は患者の主訴に直接関連するものであり、仮に主訴が複数であれば、診断名も同様となる1。 またその場合、あくまでも臨床において鑑別可能な診断学的分類が診断名を決定するのに用いられるべきである(表1)2。 通常、TMDは、@顎関節障害、A咀嚼筋障害、に大別されるが2、臨床的特徴については治療法の概略とともに後述する。 なお、顎関節および咀嚼筋に関連する、先天性および発育障害、骨折、オープンロック、硬直、拘縮等については、日常臨床においてTMD患者として遭遇する機会は多くないと考えられるため、表1の分類には含まれていない。 非炎症性 [円板転位] 復位性円板転位 転位した円板は、開口時の下顎運動における障害物となるであろう。 通常、開口時の復位と閉口時の転位による、いわゆる“相反性クリッキング”が存在する。この場合、開口時に復位するポイントまでの下顎の一時的な偏位(deviation)が認められ、復位した後に下顎の運動は正中に戻る。 治療 痛みがなければ、とくに治療の必要はない3。 患者教育(クリッキング等について)と家庭療法の指導は発症(疼痛等)を予防するであろう。 なお、関節の状態は定期的に観察されるべきである。 痛みがある場合は、次のようなスプリント療法が適応となる1。 @夜間の上顎スタビライゼーション・スプリントの使用
a 関節雑音が開口中期と閉口末期に起こる(相反性クリッキング) 非復位性円板転位 この状態では開口時に円板は前方に停滞し続け、正常な滑走運動は阻害され、いわゆる“クローズド・ロック”と呼ばれる状態となる6。 治療 @急性−徒主的マニピュレーションによる円板の復位7 徒手的マニピュレーションに成功したならば、下顎の閉口運動末期に円板が再び転位するのを防ぐために、直ちに上顎の前方整位型スプリント(ガイドランプ付)を製作、装着すべきである。 このスプリントは終日(24時間)装着され、少なくとも1週間は食事中も含めて使用されるべきである。 その後、昼間は下顎用を装着し、夜間の上顎用とともに継続使用する。 通常、6〜8週間円板の復位を持続した後に、前方整位型はスタビライゼーション型に移行される。 A慢性− スタビライゼーション型スプリント 徒手的マニピュレーションが不成功に終わった場合は、スタビライゼーション型による円板が転位したままの状態でスプリント療法を試みる3。b関節周囲の痛みを抑えるためには非ステロイド系消炎鎮痛剤による薬物療法が併用される。 慢性化した患者の多くで、転位したままの状態に適応し正常な機能を回復することが可能なので、外科療法の決定には時間をかけるべきである。 なお、徒手的マニピュレーションによって円板が復位しない場合は、前方整位型は使用されるべきではない。 [過大運動] 過大な開口運動の結果として、円板ー下顎頭複合体は滑走運動の正常な範囲を超えて関節結節のさらに前方へと押し出され、円板と関節窩の間に位置以上を生じる(図3)8。 開口時の最終段階において”ドスン”という音(サッド)とともに、下顎頭の激しい動きが認められる。 通常、この状態は無痛性であくびや大開口時の下顎の偏位といった既往をもつ。 診断上、関節円板転位におけるクリックと過大運動時の音(サッド)とは区別されなければならない3。 治療 @大開口時の制限 炎症性 [滑膜/関節包炎] 関節包と滑膜の炎症はほとんど同様の臨床像をもち、同一の治療法が選択される。 なお、X線上では骨の構造的な変化は認められない。 原因としては円板転位の既往、過度の負荷、外傷、感染等が考えられる。 臨床的には関節の圧痛および機能時痛、運動の制限、等が認められる。 治療 @運動制限(無痛の範囲内) [多発性関節炎] リューマチ様関節炎に代表される全身疾患である多発性関節炎は、多くの患者で顎関節にも影響を及ぼす。 これらの症状では滑膜/関節包炎、両側性の骨(下顎頭)の構造的変化(破壊、吸収)が認められ、正常な下顎の機能を阻害する。 治療 多発性関節炎は全身的(医科的)に管理されるべきだが、関連するTMD症状に関しては下記の治療法が推奨される。 @運動制限(無痛の範囲内) 骨関節症/OA
退行性で骨の構造変化をともなう非炎症性の関節状態をいう2。 いまだ原因は明らかではないが、あくまでも自己限定的であると考えられている。 なお、円板転位の既往は決して珍しくない9
。 治療 @運動制限(無痛の範囲内) 急性 [筋痛] 局所の持続性の痛みの(鈍痛)と原因筋の触診による圧痛を臨床的特徴とする。 通常、下顎の運動範囲は機能時痛とともに制限される。 筋肉に炎症を引き起こし、痛みは筋スパズム(不随意的な収縮)と連動し悪循環を形成することもある3。 治療 @可能な限りの原因除去 慢性 [筋・筋膜痛]
筋・筋膜痛は、筋肉・腱のトリガーポイントと呼ばれる局所の発痛点と他の部位への関連痛を臨床的特徴とする筋肉障害である。 トリガーポイントは慢性の筋緊張、不良姿勢、ブラキシズム、外傷後の二次的な問題として関連する筋肉に生じると考えらている10。
また、筋肉を弱める他の因子、たとえば運動不足、睡眠障害、関節疾患、全身疾患、感情的ストレス、代謝障害等もトリガーポイントを形成するのに寄与する。 治療 @促進・持続因子の除去 TMD患者の治療目的は、痛みの軽減・除去および顎機能障害の改善である3。 目的を達成するためには、各々の患者に個別の治療計画が立てられるべきである。
TMDおよび口腔顔面痛の診断は決して容易ではない。 なぜならば、通常TMD患者には機能障害だけではなくさまざまな痛みの訴えがあるからである2。 重要なのは、”どこから出ている、どういう痛みか”を歯痛→TMD痛→非TMD痛の順で、可能な限り確認することである。 また、同様な順序で一般的には治療は困難となる。 1.
Okeson
JP : Bell's orofacial pain. Chicago, Quintessence,135-184, 235-258,
259-294, 1995.
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