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.TMDと口腔顔面痛(OFP)の最近の考え方:
J.P.Okesonは顎関節症を含む口腔顔面痛を歯科医が診ることを盛んに強調しています。 その最大の理由は、口腔顔面痛で一番多いのが歯原性の疼痛をはじめとした口腔内の疼痛だということです。 その鑑別は一般医科の医師にはできませんから、歯科医が鑑別すべきものとされます。 開業医を受診される顎関節症の患者さんはおおまかに3つに分けられます。 咀嚼筋に問題がある人が全体の約7割、顎関節自体に問題がある人が2割、そして非咀嚼系由来の口腔顔面痛(非TMD痛)を訴える人が1割です。 もちろん、咀嚼筋痛と顎関節痛の両方がある人もいます。 いずれにせよ9割は確かにTMD患者であり、一般的な治療法で改善することが多いのですが、残りの1割の患者さんには効果がありません。 医療施設での治療でトラブルになりやすいのはこの種の症例で、鑑別診断が重要になります。
1割と聞くと少ないように感じられるかもしれませんが、これを鑑別できなければ、最初は1割でもだんだんそういう患者さんが溜まっていって、1割が2割、2割が3割と増えていきます。 そのようにして、最後はこういう患者さんばかりが残ってしまったのが、1980年代のアメリカやヨーロッパのTMDセンターや口腔顔面痛クリニックの状況だったのです。 これを解決する方法から、近年いろいろな診断法が確立してきたわけです。(拙著;一般開業医におけるTMD治療<現症>参照<診断>参照)
口腔顔面痛は、基本的に2つの軸に分けられます。 1つは身体的な軸、もう1つは心理的な軸です。 心理的な軸というのは、いわゆる神経症や精神疾患からくる心因性の痛みです。 私どもが扱えるのは、もちろん身体的な軸に分けられる痛みです。 顎関節症の痛みは、そのなかでも体性痛のなかの深部痛、さらにそのなかの筋骨格痛に含まれます。
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口腔顔面痛の分類(Okeson,J.P.
* Bell's orofacial pain. Quintesssense, Chicago, 1995.
より引用改変)
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しかしながら、わたしども医療施設に受診される患者さんの訴える痛みは、筋骨格痛ばかりではありません。 そのなかには片頭痛など血管性の痛みも含まれる可能性があります。 また、神経疾患性疼痛に分類される発作性神経痛などの神経痛患者も入ってくる可能性があります。
TMDによる痛みがこれらの口腔顔面痛と基本的に異なる点は、正常な神経系に支配される組織への刺激に反応して起こるところにあります。 つまり非常に重要な点は、あくまで局所を支配する神経は正常であり、問題は組織すなわち筋肉や関節にあるということです。
TMDによる痛みと他の原因による口腔顔面痛痛は、消去法を用いて鑑別します。 すなわち、類似の症候を起こしうるすべての障害を含んだ診断分類のなかから、特定の障害を除外していくことになります。
具体的には、まず歯原性の疼痛を疑います。口腔内の、歯髄、歯根膜、歯周組織を疑います。 一般のかたにはムシ歯や歯牙破折、歯周病や根の治療のあとの痛みと言い換えた方が分りやすいかもしれません。 それがなかったら、次に多いTMD痛、すなわち咀嚼筋や顎関節の痛みを疑います。 それもなかったら、非TMD痛を疑います。 これには、頭蓋内の問題と、頭蓋外の関連組織である目,耳、鼻、その他の問題とがあります。 また頭痛には片頭痛、緊張性頭痛などがあります。 神経痛に発作性神経痛、持続性神経痛といったものがあります。 この順序でどんどん除外していって、最後に残ったものが一次診断として浮かび上がるという方法をとるのが、一番確かであると考えられます。
一次診断の後、治療計画を立てて、初期治療に入ります。 TMD痛の可能性が高い場合で非TMD痛のスクリーニングする目的で、この段階ではあくまでも保存的治療を行い、診断を確定するまでは非可逆的な治療方法は絶対に避けるべきでしょう。 そして治療計画に則って初期治療を行い,必ず再評価をいたします。 確定診断はそれからでも遅くはなく、この再評価の段階で、スプリントにも反応しない、薬にも反応しないといった場合には、別の疾患(非TMD痛)を疑います。
Okeson(1995)1によれば,TMDの管理において治療の"成功"が得られない理由としては,治療の質(クオリティ)ではなく誤診やあいまいな診断が最大の要因であるとされます7,8。 診断とは"他の疾患から一つの疾患を識別する技術"として定義されますが3,慢性のTMDおよび口腔顔面痛の患者さんに正しい診断名を確定するのは容易ではありません。 なぜならば,TMDは他の頭蓋顔面や口腔顔面痛障害としばしば共存し8,関節,筋以外に神経,脈管,および心理社会的な因子を含めたさまざまな問題が原因と考えられるからです。
TMDにおける主訴の第一位は疼痛ですが4,日常臨床においてわたくしどもが遭遇する疼痛障害は次の三つに大別されます7。すなわち,
1) 歯痛
2) TMD痛
3) 非TMD痛(非咀嚼系由来の口腔顔面痛)。
医療者が日常臨床においていかに効率良く鑑別診断を進めていくのかといえば,前述のように"類似の症候を起こしうるすべての障害を含んだ診断分類の中から,特定の障害を除外していく" という消去法を用いることになります8。 つまり,口腔顔面痛を主訴とする患者さんは,まず最初に歯原性(歯と歯周組織が原因)の疼痛要因について評価されるべきであり,次いでTMDについて評価する必要があります。
仮に,これらの歯,歯周組織あるいはTMDが上記の病因から除外された場合は,非TMDの疼痛要因について評価がおこなわれます。 非TMD痛(非咀嚼系由来の口腔顔面痛)に関しては、一般的にその管理が困難なため専門医あるいは専門機関に紹介すべきであるとされます。 表1は日常臨床に即した口腔顔面痛の診断分類です。 なお,ここでは心理社会的因子のグループに含まれるものは除外してあります(精神病,神経症等)。
表3.日常臨床における口腔顔面痛の鑑別診断
| 1.歯痛 |
歯髄、歯根膜、歯周組織、舌 |
| 2.TMD痛 |
咀嚼筋、顎関節、その他周囲組織 |
| 3.非TMD痛 |
頭蓋内------腫瘍、出血、他 |
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関連組織----目、耳、鼻、他 |
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頭痛--------片頭痛、緊張性頭痛、群発痛、他 |
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神経痛------三叉神経痛、外傷後神経痛、他 |
A ) 歯痛(口腔内の疼痛)
口腔内の疼痛は口腔顔面痛のもっとも一般的な原因で,歯髄,歯周組織,歯肉,口腔粘膜領域,舌が含まれる8。口腔顔面領域の他の部位に診断を進める前に,ひとつの可能性として必ず排除されなければならない9。
<臨床的な特徴>
・歯や歯周組織に対する誘発試験(温度診,電気診,打診他)に反応する。
・歯や周囲組織への診断用局所麻酔にて痛みはブロックされる。
B ) TMDの痛み
一般的な症状としては,下顎の運動制限,関節雑音,頭痛および顎関節,顔面,耳,肩の痛みが挙げられる9,1。TMDは体性深部痛の筋骨格痛のカテゴリ-に属する(表2)7。体性痛とは局所に分布する正常な神経への侵害刺激によって生じる痛みである10。したがって,診査における顎関節と咀嚼筋の触診あるいは機能時の痛みの有無の確認は,体性痛の特徴である
"刺激-反応"
という関係を臨床的に再現するのにもっとも推奨される方法である11。
<臨床的な特徴>
・症状は下顎の機能と関連している。
・顎関節と咀嚼筋の手指による触診や誘発試験によって痛みは増加する。
・"持続性の鈍痛" と表現されることが多い。
C ) 非TMDの痛み(非咀嚼系由来の口腔顔面痛)
頭蓋内の出血など緊急を用する障害や,目,耳,鼻などの頭蓋外の関連組織の障害,または一次性頭痛,神経性疼痛障害によって引き起こされる。
<臨床的な特徴>
・下顎の機能とは直接関係なく起こり,また場合によっては侵害刺激がなくても起こりうる。
・痛みは同じ程度にとどまらず変化しやすい。
異常感覚(ヒリヒリ)・拍動痛(ズキズキ)・激痛
急激に始まる,短時間に強くなる・弱くなる
OFPセンター 正司喜信
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参考文献
1. American Academy of Orofacial Pain.
Temporomandibular disorders: Guidelines for classification,
assessment and management. Quintessence, Chicago,
1993: 11-25, 61-79.杉崎正志,藤井弘之 監訳,TMD治療の最新ガイドライン;東京,クインテッセンス出版, 1993:13-27, 63-81.
2. Austin DG and Pertes RA. Examination
of the TMD patient. In: Pertes RA,
Gross SG (eds). Temporomandibular disorders and
orofacial pain. Quintessence, Chicago, 1995: 123-160.
3. Fricton JR. Recent advances in
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4. Solberg WK.
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Haley DP and Shapiro BL. The
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temporomandibular disorders. JADA 1990; 120:
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7. Okeson JP. Bell's orofacial pain. Chicago,
Quintessence, 1995:93-102.
8. American Academy of Orofacial Pain. Orofacial
Pain: Guidelines for assessment, diagnosis and management. Quintessence, Chicago, 1996: 73-88.藤井弘之, 杉崎正志
監訳,口腔顎顔面痛の最新ガイドライン;米国AAOP学会による分類,評価,管理の指針。東京,クインテッセンス出版,
1996.
9. Pertes RA, Gross SG(eds).
Temporomandibular disorders and orofacial pain. Quintessence,
Chicago, 1995: 123-160.
10. Fields H L.: Pain. Newyork,
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11. Bell WE. Orofacial pains:
Classification, diagnosis, management. ed
4, Year Book Medical Pub., Chiccago, 1989: 114-150.
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