口腔顔面痛(OFP) とは?

 

 

 

 

 

 通常、口腔顔面領域に発現する疼痛は以下のように、@ 頭蓋内、A頭蓋外、B筋骨格性、C神経血管性、D神経因性(ニューロパシー性)、の5つに分類されます6。このうちTMDは、Bの筋骨格性に亜分類されます5

・腫瘍・脳動脈瘤・膿瘍・血腫・出血・浮腫
 口腔顔面領域に痛みを起こす頭蓋内の病変です。
・耳・鼻・眼・副鼻腔・咽頭・唾液腺・リンパ節・頸
・歯髄炎・歯周組織炎・歯肉粘膜炎症・舌
 咀嚼筋・顎関節以外の口腔顔面構造物の病変です。

・発作性:三叉神経痛、舌咽神経痛、後頭神経痛
持続性:帯状疱疹後神経痛、外傷性神経痛、非定型歯痛

 神経因性の痛み(ニューロパシー性疼痛)は、神経系の機能異常によって引き起こされる痛みで、三叉神経痛のような「発作性」と、以前は非定型顔面痛という名で呼ばれることの多かった「持続性」とに分類されます。

・咀嚼筋・顎関節・関連諸組織

 歯科疾患以外の痛みでは、咀嚼系(顎関節、咀嚼筋)由来の痛みが最もよくみられます。最近では顎関節や咀嚼筋以外にも頸部からの関連痛がTMD様症状の原因として一般的に受け入れられており6、臨床的評価には必ず頸椎および頸部筋の評価も含まれます。なかでも、後述する筋・筋膜トリガーポイントによる関連症状の鑑別は重要です。

・機能性頭痛: 片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛
・症候性頭痛: 側頭動脈炎・脳内出血ほか

 神経血管性の痛み(機能性頭痛など)のうち、特に片頭痛は慢性の頭痛だけでなく顔面痛をも引き起こす原因として珍しくありません。したがって鑑別に際しては十分に注意しなければなりません。緊張型頭痛(いわゆる筋緊張性頭痛)は神経血管性ではないものの、通常は便宜的にこの項目に分類されます。

・心因性疼痛障害・身体化障害

  心因性の痛みは、身体構造上はまったく問題のない疼痛障害です。「心因性」という用語が使用される場合は、心理的・感情的あるいは精神障害の存在を意味します4,5。

 

慢性のTMD症例において診断を確定するのは容易ではありません。なぜならば、TMDはしばしば他の頭頸部の疼痛疾患と共存するからです4,5。したがって、臨床においては、まずTMDとこれらの疼痛疾患とを正確に鑑別しなければなりません。TMD治療を成功させる鍵は、まずどの器官から症状が生じているのかを見極めることです。多くの場合、臨床的問題は顎関節、咀嚼筋由来のものですが、別の組織も痛みの発生源となり得ます。 非咀嚼系由来の口腔顔面痛の鑑別診断についても、あらためて今後具体的に解説していきます。

 

口腔顔面痛(OFP)の概観

 日常において頭部、顔面、首、肩などの頚部に痛みを3人に1人は感じていると言われています。昨今話題のTMD(顎関節症)を疑われる人の中には、慢性的な痛みや感覚異常を訴える患者さんも認められますが、痛みの原因が必ずしも患者さんが痛みを感じる部位に存在するとは限りません。つまり、場合によっては"痛みの発生源"と"痛みを感じる部位"とが別々に存在しているということもあります。これまで、この分野においては専門家の間にさえ多くの論争あるいは混乱がありました。一般の805人を対照とした最近の米国での調査によれば、5年以上に亘って何らかの痛みを持っている10人の患者さんのうち4人以上の人々が適切な治療を求めて少なくとも1度は担当医師を取り替えた、ということが判明しています1,2。実際、臨床の場において痛みを訴える患者さんに接する多くの医師あるいは歯科医師は、しばしば患者さんが慢性化した痛みの改善を誰に相談すべきか迷っていることに気づきます3。しかしながら、最近の痛みに関する神経生理学的な分野の発展は凄まじく、多くの発見・報告が患者さんの訴える慢性の痛みの改善に大いに寄与するものとなってきました。今後、これらの患者さんの訴える問題が、より早く、苦しまず、低コストで改善される可能性は充分にあります。したがって、口腔顔面痛という分野の発展によって歯科医師が多くの患者さんに提供することができるであろう利益について、われわれはその認識をさらに高める必要があります。

このような状況を受けアメリカ歯科医師会(ADA:American Dental Association)は歯科臨床におけるTMD(顎関節症)を含む口腔顔面領域の疼痛疾患を包括的に扱う、口腔顔面痛の専門医制度の検討に入っています(2001年の時点)。  

       OFPセンター 正司喜信


参考文献
1. Pertes、 R. A.、 Gross、 S. G.:Temporomandibular disorders and orofacial pain. Quintessence、 Chicago、 1995、 109〜121、 123〜160.(杉崎正志、木野孔司、小林 馨監訳:顎関節症と口腔顔面痛の臨床管理.クインテッセンス出版、東京、1997.)
2. American Academy of Orofacial Pain:Temporomandibular disorders:Guidelines for classification、 assessment and management. Quintessence、 Chicago、 1993、 11〜18、 61〜79.(杉崎正志、藤井弘之監訳:TMD治療の最新ガイドライン;米国AAOP学会による分類、評価、管理の指針.クインテッセンス出版、東京、1993.)
3. Bell、 W. E.:Orofacial pains:Classification、 diagnosis、 management. 4th ed.、 Year Book Medical Pub.、 Chicago、 1989、 114〜150
4. American Academy of Orofacial Pain:Orofacial Pain:Guidelines for assessment、 diagnosis and management. Quintessence、 Chicago、 1996、1〜18.(藤井弘之、杉崎正志監訳:口腔顔面痛の最新ガイドライン;米国AAOP学会による評価、診断、管理の指針.クインテッセンス出版、東京、1997.)
5. Starch R. Survey of Chronic Pain in the General Population. Robert Starch Worldwide、 American Pain Society Newsletter、 1999
6. American Academy of Orofacial Pain Survey of Members、 Mount Royal、 New Jersey、 1999.
7. Look J. Practice Patterns for Orofacial Pain Disorders: A Survey of General Dentists and Dental Specialists. Submitted to JADA、 2000


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