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治療法につきましては、わたしどもの推奨する可逆的・非侵襲的処置ということにつきましてご説明いたします。 顎関節症の患者さんの主訴で最も多いのは疼痛です。 成人における疼痛の管理は薬物療法と非薬物療法の2つに大別されます1。 この痛みに対しては、薬物療法にしろ非薬物療法にしろ、はじめの段階から対処する必要があります。 当初の段階から痛みが強い場合には、薬物療法として局所麻酔によるブロックや、鎮痛剤の処方などを行います。 また最近TMDの分野にも応用されるようになった除痛のための非薬物療法は、大きく分けて5つあります。 すなわち、患者教育(患者への説明)、行動認識療法(習癖等の除去)、リラクゼーション法(通常、バイオフィードバックなどを利用)、理学療法(フィジカルセラピー)、整形的装置療法(スプリント等)です。(拙著;一般開業医におけるTMD治療<治療>参照)
そのなかのリラクゼーション法としてのバイオフィードバック療法は、専門的な訓練が必要で、一般開業医で用いられるのは現実的でないと思われます。 その点、以下の理学療法は簡便で、かつ非常に有効であるために、頻繁に応用されます。 わが国では、TMD理学療法は現在歯科医が行なうしかない状態にありますが、米国では一般に理学療法士が行っています。
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日常臨床におけるTMD管理のための理学療法としては,
1)姿勢の改善(Posture training)
2)運動(Exercise)
3)可動化(Mobilization)
4)電気刺激(Electricalstimulation)
5)超音波(Ultrasound)
の5つの方法が推奨されます。 |
具体的な治療の手順は、TMDの患者さんが来院されると、まず家庭療法を指示いたします。 これには、セルフケア、薬剤の服用なども含まれます。 薬物療法は、顎関節にしろ筋肉にしろ、痛みに対しては通常非ステロイド系の消炎鎮痛剤が第一選択になります。 次いで歯軋りや噛みしめ、ブラキシズムがある場合はスプリントを使います。 それでも奏功しない場合には理学療法を行うことになります。
TMD治療における理学療法の位置付け

(Clark,
G. T.: Oral Maxillofacial Surgery clinics of North America, Feb.,
149〜166,1995.より改変引用)
理学療法は具体的には、現在TMD管理のためには上記のように大別して5つの方法が推奨されていますが、これらを単独にあるいは組み合わせて用います。
姿勢の改善は、壁面部を背にして後頭部、後肩部、臀部を接触するようにして立つことを1日のうち頻回に行うよう指導します。 疲労した筋肉を修復し、頭痛や頸部の痛みを緩和する効果があります。

Ceders−Sinai Medical Center
のパンフから改変引用 |
* 筋電図を用いた研究によれば、頭部の前屈に拠って舌骨筋や後頭頚椎筋の後屈によって咬筋、胸鎖乳突筋の活動レベルがそれぞれ上昇すると報告されています17。 頭部前方位姿勢(forward
head posture)により、安静時でも咀嚼筋、頚部筋、および頚神経(C2、C3)に不必要な不可が生まれると考えられています18,19。 最近、頚椎機能障害の原因として不良姿勢については見直されてきていますが13、より良い姿勢の指導は17、疲労した筋肉を修復し、頭痛あるいは頚部の痛みを緩和する目的で臨床的に支持されるようになってまいりました。 |
運動は、机や台の上などにしっかりとひじを固定した手のひらに下顎をのせ、下顎を持続的な抵抗に逆らうように、15mm程度開口するようにし、5秒間そのまま保持した後に5秒間リラックスさせる。 これを朝夕5回程度おこないます。

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*患者さん自身による運動療法は,関節や筋肉の柔軟性を取り戻し、正常な顎運動を取り戻すために行ないます。 適応としては、関節円板の転移、過大運動、痛みによる二次的な筋機能亢進があげられます。
TMDにおける咀嚼筋の機能亢進に対しては、上記のような患者さん自身による等尺性運動が推奨されます。 この等尺性運動によりクリッキングをもつ患者22人中18人(およそ82%)のクリッキングが消失したと報告されております20。 なお,その際にしばしば温湿布による温熱療法が事前に行われます。 温湿布による皮膚の温度上昇で浅部血管は拡張し、末梢の循環が促進され局所の炎症性物質(プロスタグランジンなど)は取り除かれると考えられ26、結果的に、原因筋は緊張を緩和し、運動の効果を高めるとされます。
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可動化療法は関節や筋肉の緊張を解くことです。 結果として運動範囲を取り戻し痛みの軽減を促進いたします。 通常は冷温湿布,スプレイ,超音波,電気刺激などによる疼痛管理下で行われます。 温湿布による組織の温度上昇で浅部血管は拡張し,末梢の循環が促進され,結果的に局所の炎症性物質(プロスタグランジンなど)は取り除かれます。なお,急性期においては反対に血管拡張などの炎症反応を抑える冷湿布が推奨されます。 気化冷却スプレイの応用は筋の痛みを一時的に緩和させ,同時に筋線維をストレッチすることにより筋・筋膜痛における誘発点の不活性化に役立つと考えられています。

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*可動化療法の適応は非復位性円板転位21、筋の拘縮、関節の線維性強直などです22。 |
電気刺激
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*神経生理学的研究によれば,皮膚を介して伝達される太い有髄神経線維からの入力は,痛みのインパルスを伝達する細い無髄神経線維の入力を抑制します23。経皮的電気神経刺激(TENS)による刺激はこの太い有髄神経線維によって伝達され,疼痛入力を抑制すると考えられています(参考図)。Wessbergら(1981)24 は21人の筋・筋膜痛患者に対してTENSを用い,86%の成功率を治めたと報告しています。正確なメカニズムについては今後の研究に委ねられますが,電気刺激による痛みの軽減と,筋のストレッチなどを含む運動との併用は臨床的には効果を生んでいます15。なお,ペースメーカー装着者,開放創,咽頭および喉頭筋,目への直接使用,あるいはてんかん発作,一時性局所性貧血,心臓疾患の既往のある患者の目,頭部,頚部,妊娠中の患者への使用は禁忌とされます9。 |
超音波療法は深部組織への熱作用の応用とされます。 顎関節周囲の関節包は超音波を容易に吸収するコラーゲン線維を多量に含んでいます26。 超音波が組織に吸収され周囲の温度が上昇するとコラーゲン線維の粘着性は低下し,関節周囲の構造は本来の伸展性を取り戻すと考えられます6。 超音波と同時に開口させ可動性を回復し,結果として痛みや腫れを和らげます。他の温熱療法(赤外線照射など)との比較検討に関しては今後の研究が待たれております。 なお目や発育途上の小児の骨端への直接使用,あるいは妊娠中の患者への使用は禁忌とされます19。
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*超音波には1Mzと3Mzの2種類がありますが、TMDにおいては、到達深度の浅い場合3Mzが推奨されています13。 通常、3Mzの場合皮下3cmまで到達すると考えられています13。
関節周囲の温度が超音波の照射により上昇すると、周囲の軟組織はその伸展性を増し,局所の血流量を増すことで炎症を軽快させます13,16。 皮膚との間にゲルを介在させて,顎顔面領域の場合は3Mzにて1〜1.5 watts/cm2,急性期には0.5〜0.8 watts/cm2で3〜5分間使用します7。 |
OFPセンター 正司喜信
参考文献
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