|
トリガーポイント注射とは
トリガーポイントを有する患者さんが、通常は有効なスプレー&ストレッチなどの理学療法7に反応しない場合17は、トリガーポイントへの直接的な筋肉注射が応用されます18,19。 その場合、トリガーポイントの数やその原因あるいは注射後の管理にもよりますが、注射によってトリガーポイントは中長期的に、あるいは永続的に除去されるでしょう11。
これまでの報告によれば、生理食塩水や注射針のみ(薬液なし)の刺入も効果的であるといわれていますが、局所麻酔薬の使用は注射後の痛みをなくし、疼痛サイクル(回路)を寸断するという点でより効果的です19,20。 また、関連痛を含めすべての症状が軽減・除去されることで、トリガーポイントが疼痛発生源であるということを即座に鑑別できるという点でも優れています。 通常、血管収縮薬は使用されませんが、これは筋への悪影響を最小限とするためと、麻酔時間の延長を必要としないからです。 一般的に局所麻酔薬としてはプロカインが推奨されますが、これはプロカイン(0.5〜1.0%)が筋に対して最も毒性がないと考えられているためです18。 歯科においては頻繁にカートリッジ注射器用のリドカインを用いられますが、1〜2%リドカイン(エピネフリン無添加)も使用可能です。
術者が正しく注射を行なうためには、常に次のことを守らなければなりません。 まず、術者は注射部位の正確な解剖学的知識をもち、使用される薬液の薬理を理解している必要があります。 刺入後の吸引も忘れてはなりません11,18。 なお、急性炎症あるいは感染が疑われる部位への注射は避けるべきとされます。
 |
ここでトリガーポイント注射の例にとり手順を示します。
@触診によるトリガーポイントの確認後、皮膚上に小さな圧印をつけ注射部位を明示する。
A希ヨードチンキ等の消毒液を皮膚に塗布する。 ヨードチンキが乾燥するのを待って、さらにアルコールガーゼで注射部位をきれいに露出させる。
|
B注射部位に気化冷却スプレーを噴射する。 フルオリメタンやエチルクロライドは最も一般的なスプレーである18,19。 まず患者の治療側の目、耳、鼻を手で保護したうえでスプレーを噴射すると注射部位は冷却され、それによって刺入時の痛みは軽減する。 その際皮膚表面が白っぽくなる直前まで噴射する(5秒程度)。 患者は若干の刺激を感じるが、正しく使用すれば、このスプレー冷却による注射後の不快感はごくまれにしか起こらない。
C血管内への刺入を防ぐため吸引可能な注射筒を使用する。
D手指でトリガーポイントを挟むようにして下部構造から筋を持ち上げ、針を少し引きポイントの周りを回転させるように周辺の刺入を繰り返す。
Eトリガーポイントへの薬液注入後、針を少し引きポイントの周りを回転させるように周辺の刺入を繰り返す6。 これは複数のトリガーポイントが存在した場合に、将来再びトリガーポイントが形成される可能性を防ぐためである。
F注射後、出血のある場合は滅菌ガーゼで圧迫止血する。 その後、刺入部位はバンソウコウで保護される。 なお、このような事態はまれではあるが、冷湿布は術後の外傷性反応により浮腫を起こした場合に備えて、常に用意しておくべきである。
局所麻酔薬が使用された場合には、注射後にすべての痛みは除去されているはずである。 仮に患者が注射に反応を示さない場合は、術式と診断を再検討する必要がある。 そして、痛みの原因が発見されるまではさらなる治療は控えるべきである。
OFPセンター 正司喜信
参考文献
7. Rocabado M. Biochemical relationship of the cranial, cervical and hyoid regions. J. Craniomandibular
Pract. 7: 61-66, 1983.
9. Dunn J. Physical therapy. In Temporomandibular disorders: Diagnosis and treatment. AS Kaplan and LA Assael
(eds). Philadelphia: WB Saunders, 455-500, 1991.
6.
Klineberg I. Occlusion: Principles and assessment. Oxford: Butterworth Heinemann, 145-159, 1991.
11. R A Pertes and S G Gross. Clinical managemant of temporomandibular disorders and orofacial pain. Chicago: Quintessence, 1995.
杉崎正志,木野孔司,小林馨 監訳。TMDと口腔顔面痛の臨床管理。東京:クインテッセンス出版, 237-254, 1997.
17.Fricton, J. R. : Myofascial pain syndrome : Characteristics and
Epideminology. In Advances in pain research and therapy . Fricton, J.
R..,Award, (eds)., Raven Press,New York,1990,107〜127.
18.Travell, J. G., Simons, D. G. : Myofascial pain and dysfunction : The
trigger point manual. Williams and Willkins, Baltimore, 1983, 5〜44, 45〜102.
19.Bell, W. E.: Orofacial pains : Classification, diagnosis, management. ed.
4. Year Book Medical Pub., Chicago, 1989. 114〜150.
top
|